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3月の読書月記

沢山映画を観ると決意したのが2月末。それで3月は8回映画館に行った。(+Prime Videoでは2本観た)

それまでは、年に2回行くかどうかだったのに…自分の短絡的な行動力にそこそこ唖然。

コロナでさっそく出鼻をくじかれた形だが…

 

お茶の時間 (講談社文庫)

お茶の時間 (講談社文庫)

  • 作者:益田 ミリ
  • 発売日: 2019/06/13
  • メディア: 文庫
 

なんか、丁寧な暮らしっぽいのんびりした本を読んで、かわいらしいメンタルになろうと思い、最寄り本屋で面陳されていたので購入。

が、益田ミリ若い女子の味方っぽい絵柄のわりに全然若い女子の味方してくれないのを読んでから思い出した。

たぶん、ほっこり絵柄で凄まじい切れ味、というのが益田ミリの魅力なのだろうな。ぼんやり読んでいるとグサリと刺される。

一番グサリだったのは、益田氏がひとりで入ったカフェで、近くの席にいた若い女子たちが「もうすぐ30歳じゃん~やばい終わる~」とか話しているのを聞いて、フフフ…じゃあ私は終わってるってことか…とほくそ笑むシーン(益田氏は御年51歳)

確かにその若者たちの発言は浅はかなんだが、それをそう描く益田氏のうっすらとした悪意、あと、そういう若者の無神経さとか知見の狭さに対して、「フフフ」とほくそ笑むスタンスに胸がざわついた。

この「やばい終わる~」みたいな、多方面に放られた(特定の個人を意図していないという意味で)悪意なき、悪意とでも言うべきものが自分に向かってきたときどう対処するか、というのは人によって違うし、正解もないと思う。

でも、「フフフ」と冷笑気味に距離をとるのは、なんか怖いと思った。背筋が冷えた。

 

新装版 三四郎はそれから門を出た (ポプラ文庫)
 

 大好きな三浦しをん女史が直木賞の選考委員になったのが嬉しすぎて、会社でTwitterを見ていて(見るな)、知ったその日の帰り道のテンションで何度も読み返したはずのこれを文庫で再購入。 

三浦氏の書評大好き。彼女の小説はもちろん最高なのだが、読み手としてのアウトプットレベルが高すぎる。主題をがっちり捉えたうえで、なぜその主題が読み手にとって意味があるのかを、押しつけがましくなく提示してくれる。こういう読み方ができるようになりたい…といつも思う。

文学賞の選評も毎回本当に意味わからないくらい面白い。

女による女のためのR-18文学賞 | 選評 | 新潮社 

女による女のためのR-18文学賞の選評は毎年本当に楽しみにしていて、前回も「十二行目までで、「(イヤフォンを)耳にさし」という表現が四回も出てくるのは、常軌を逸した耳にさしまくりぶりだと言わざるを得ない。」とか言っていてまじで笑った。(ここはややふざけているが、平易な文章・ふざけた調子で鋭いことを言いまくっていて毎回しびれる)

三浦氏の書評集の中だったら、これが一番好き。ふつうのエッセイも読めるし。

「耐え難く代えがたいもの」の章でいつも少し泣きそうになる。 

 

本屋さんで待ちあわせ (だいわ文庫)

本屋さんで待ちあわせ (だいわ文庫)

 

 『三四郎はそれから門を出た』を買うとき、隣に並んでたからついこれも…読んだことあるし実家に単行本あるけどさ…買ったよね…。装丁かわいいし(言い訳)。

三浦しをんの書評集の中では最新だから、いろいろ最近出た本を知れてよい。

ノンフィクションが結構たくさん紹介されていた印象。学術書とか専門書まではいかないけど、小説家・文筆家ではない人(科学者とか探検家とか音楽家とかタレントとか)の本をよく読んで、毎回めちゃくちゃ生き生きと書評している。すごい。

興味を広げる営みって結構体力いるなと思う。たとえば私は死ぬほど運動音痴で、スポーツはやるのにも観るのにも一切興味持てない。で、このあまりのスポーツへの縁遠さに対するコンプレックス(=スポーツ好きの人は何となく明るそうだし気持ちのいい人間って感じがするのに私ときたら)を解消すべく、サッカー選手とそのサポーターが登場人物の小説を買って読んだんだが、まー遅々として読み進められず、泣きそうになった。

私のようなもののためにサッカーの基礎的なルールや、Jリーグの仕組みについて説明する部分が挟み込まれるのだが、これに興味がないので読み飛ばす。すると、それを前提に進むストーリーの内容が全く頭に入ってこない。それで気分が削がれ、数ページ読んでは本を閉じてしまう(自業自得)。なんとか読み終えたが、だらだらと時間をかけて読みすぎたせいで読んでいる端からそれまでの内容を忘れて行ってしまい、最終的には「…うーん(よくわからなかった)」という状態に。

サッカー攻略ならず。なんという敗北感。

同じようなことが数学とか化学とかの出てくる本(森博嗣の本とか)にも言えて、もうこれは「興味が持てない」というこの一言に尽きるのだが、時々そのことにどうしようもない劣等感を感じる。

スポーツにも、数学にも、化学にも、興味を持てればもっと人生は豊かになるに違いないのに…!

あ~、『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)を読んで「自分は数学は苦手だけど、面白かった」と言いたい。言いたいよ~。(絶対読み通せないから買ってない)

 

A子さんの恋人 6巻 (ハルタコミックス)

A子さんの恋人 6巻 (ハルタコミックス)

  • 作者:近藤 聡乃
  • 発売日: 2020/03/14
  • メディア: コミック
 

2年に一回しか新作が出ないA子さんの恋人新刊…

発売日の前日に最寄り本屋で平積みされており、嬉しさのあまり動悸がした。

震える手で購入。

私は「表面上はクールでスマートだが、実はめちゃくちゃ虚勢を張っているしみったれた男性キャラ」が狂おしいほど好き、というか端的に言ってそういう男性キャラにめちゃくちゃ性的魅力を感じるので、断然・A君派だ!A君好きだ!凄くセクシーだ!(鼻息荒)

貸し借りしているものを無理にでも清算した時の、あの異常なスッキリ感なんなんだろう。たまに、「ああもうこの人とこの先交友関係を続けるかどうか怪しいので、貸し借りはすべて清算しておこう」と思い立ってやることがあるけど、毎度スッキリ効果高すぎて驚く。なんなんだろう。本当にすごいよな。

個人的にU子ちゃんがめっちゃ好き。かわいい。U子ちゃんだけのLINEスタンプ出してほしいくらい好きだ。

シンチェリータ行きたいなあ。コロナめ…

 

500年の営み (onBLUE comics)

500年の営み (onBLUE comics)

 

 『本屋さんで待ち合わせ』の文庫版書下ろしかな?でしをん氏が褒めちぎってたので購入。

思えば、BLを読むようになったのも、「BLに興味がない」自分に強い劣等感を感じ(「腐女子のオタクって普通のオタクより人生楽しそう(偏見)」と漠然と思っていた)、とりあえず自分が普段読んでいるNL漫画家(ヤマシタトモコ雲田はるこ等)がBLも書いているようだから、と言って買い始めたのがきっかけだった。

ということは、これは強行・興味拡張がうまく行ったケースか…

でもBLって結局少女漫画の文法で書かれているし、作者も共通だったりするし、別に元々少女漫画に親しんでいた自分にとっては何も無理してない感じがするな。

しかも、好きな作家が新刊を出したらチェックするくらいで、本屋に行くたびBLの棚をパトロールするほどハマってもないしな。敗北。(また)

で、これは、最初読んだ時は「いや……は?なんで好きになってんの?」と思ったんだが、読み終わって半日くらい経ってから感動が来た。

たぶん、この漫画は、Aさんを愛することと、Bさんを愛することの相違点が描かれているんだな、と思った。

基本的に恋人とかパートナーの枠に1人しか収まらないという社会的な前提の上で、Aさんをそこに置いて愛していた人が、Aさんと別れた後、Bさんを恋人(パートナー)にしたとする。

Aさんに対する愛情とBさんに対する愛情は、相手が違うんだからやっぱり異質なものになる(好きな所も違うし、相手に対する自分の振る舞いも違うはず)とは思うんだが、でも、世の中的には、そのたった一つのポストに向けられる愛情の重さや大きさは、同質たるべきだという思想もある気がする。

かといって、Aさんを愛したようにBさんを愛するというのは、それはBさんに対して不誠実なんじゃないか?というようなことを考えた。

 

意識のリボン

意識のリボン

  • 作者:綿矢 りさ
  • 発売日: 2017/12/05
  • メディア: 単行本
 

 この頃、三島の『戦後日記』をニヤニヤと読み進めていて、心がすっかり戦後に居たので、現代的なものにも触れておかねば…と思い、読みかけで2年とか放置されていたこれを本棚から引っ張り出してきた。

短編集だから、料理しながら読んだな。野菜が煮えるのを待つ間とかに。

地味にサイン本。名古屋で働いていた頃、「サイン本!」というのが平積みされていたことに「さすが名古屋…!?」と興奮して購入した。(都内の書店だと、著名な作家のサイン本はわりとすぐに売れてしまう) 

綿矢りさは、普通に好きだけどあんまり詳しくない。(たぶん4冊かそこらしか読んだことない)

なぜか分からないけど綿矢りさを読むと「あ~綿矢りさだ~」という感情に頭の8割5分ほどが持っていかれてしまい、それ以外のことがほとんど考えられなくなってしまう。文体が特徴的すぎるのか?癖があるとか嫌とか思ったことはない(むしろ好き)なのにな。 

私の中で綿矢氏は「これ何ていう私?」と思わされる系筆致(太宰治の「女生徒」でよく言われる徹底的な一人称筆致のような…)の代表格だから、自分を暴きたくないという防衛本能が働いて、読んでいても抽象的な思考に結び付かないんだろうか。なんなんでしょう。

これも身につまされるような箇所がいくつもあって良い本だったんだけど、最終的に残ったのは「あ~綿矢りさ氏の筆致~うんうん好き好き」としか表現できない感慨であった。敗北。(再再掲)

 

戦後日記 (中公文庫)

戦後日記 (中公文庫)

 

 もうすぐ映画(「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」)が公開になるなあ、と思って本棚から出してきて読んだ。

随分前に最寄り本屋で買ったはず。新潮文庫の『小説家の休暇』とだいぶ収録作品がかぶっているが…まあいい。(そっちはちょっと読んで放置してしまっている)

もうめちゃくちゃ面白い。最高の日記本です。

最高だと思ったのは2点あり

①小説家であり戯曲作家であり俳優であるということで論じることが可能になる、小説と演劇の比較論がめちゃくちゃ面白い。

舞台は空間から作者が定義できるので、その中で起きることに観客はそこまで強く必然性を求めない(それはそういう空間なのであると思って見ている)が、小説の方が読者に想像の自由を与えていて、ある部分読者が暮らす現実世界と接点を持った世界に物語が展開している(たとえば、「太郎はカフェで~」という描写を読んだ時、読者は自分の知っている”カフェ”のなかに"太郎"を配置して想像することしかできない)から、一つ一つの出来事に必然性を求められがち」という話などは目からうろこ。確かにそう。

②破天荒な生活、皮肉とユーモア

自決してなくても早死にしただろ絶対という感じの生活リズム。

作家・演劇仲間と飲んで25時すぎ帰宅がデフォ。筆がのれば徹夜しまくり。そんなんだから朝9時に起きるだけで「決死的早起き」とか言ってる。

そんなんだから、付き合いで観に行った演劇が退屈だと眠くなってしまい、勝手に抜け出して近くの映画館でドンパチアクション映画観て「面白かった」とか言ってる。勝手か。おもろい。

全体的に皮肉とユーモアが効いているのがいい。好きな文体。 

好きな作家は三島由紀夫と言うといつもギョッとされるが、べつに憂国思想で自決してるから好きとかじゃないんだよ~ただただ文体が好き…

よく、教科書だか推薦図書高で『潮騒』を読まされ、三島が無理になったという人がいるが、そういう人は『レター教室』とか読んでみて欲しい。

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

 

「おじさんLINE」の文法が50年前から確立していたことが分かるし、三島がそれをめちゃくちゃバカにしていてかなり痛快。 

 

九龍ジェネリックロマンス 1 (ヤングジャンプコミックス)
 

 まあまあ、悪いことは言わないから1話を試し読みしてほしい。

[第1話] 九龍ジェネリックロマンス - 眉月じゅん | となりのヤングジャンプ

巻頭カラーのあと、本文はじまって、見開きタイトルまでの7ページでもう、もう好き。ナニコレ?イケすぎちゃってない?大丈夫?もう本当に最高の漫画体験なんですが?もうこんなんドラマも映画も小説も勝てないんですが?

通勤電車でこの見開きにあたって、息をのんだ後、「あ~~~~~」って小さめの声で言ったからね。もうそのころはコロナですきはじめた電車だったよね。でももう周りに聞こえてようが構わないよ、そのくらい我慢できないくらい最高だったんだから…

恋は雨上がりのように」読んだ時、「人を好きになることの鮮やかさを描いているのに、なぜか全編を通じて失恋のことばかり鈍く思い出させてくる漫画だな」と思ったんだが、この漫画も、本編は恋に落ちるみずみずしい瞬間の連続なのに、不思議と全体のトーンが不穏。

なんなんだろう、こんなにみずみずしくて鮮やかできゅんとするシーンばっかり書いてるのに~~すご~~もう最高の漫画じゃん(語彙が死んだ)

 

酒と恋には酔って然るべき  4 (4) (A.L.C.DX)

酒と恋には酔って然るべき 4 (4) (A.L.C.DX)

  • 作者:はるこ
  • 発売日: 2020/03/16
  • メディア: コミック
 

3巻そんなにだったから買うか迷ったけど買ってよかった。

わたしも安直に今泉が好き。安直に。悔しいけど。

Say「そういうところだよ今泉」!!!!そのためだけの漫画。そういう連帯でつながっていこう。うん。

 

マイ・ブロークン・マリコ (BRIDGE COMICS)

マイ・ブロークン・マリコ (BRIDGE COMICS)

  • 作者:平庫 ワカ
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: コミック
 

著者の処女作で、出版されてから数か月経つのに発売以来ずっといろいろな本屋で平積みされており、全国の書店員が圧倒的に支持しているっぽいことを感じさせられてはいたのだが、あらすじを見て「ふーん、いい感じの短編集に入ってる短編っぽい感じだな、まる1冊かけて書くことか?」とか思いずっとスルーしていた。

しかしRebuildfmとバイリンガルニュースで2度に渡ってhakさんがおすすめしていたこと、あと、熊本で立ち寄った人生最高の書店(長崎次郎書店)でも面陳されていたことからついに購入。

…殴りたいよ。ええ。今まで書店で何度となくこれをスルーしていた自分を。

買えよ!たかが700円だろ!買え!都内のラーメン1杯にも満たない金額だぞ!

ない頭で躊躇してないで買えバカ!(cv.天堂先生from恋つづ)

私の中で、「どこにでもある漫画」と「そうでない漫画」を分ける基準の一つに「シリアスとユーモアのバランス感覚に優れていること」というのがあるんだが、これはまさにそのバランス感覚が素晴らしい。

人生において重大な局面、切実なこと、どうしようもなくやるせない気持ちというのは、それが当事者にとって差し迫っていればいるほど、客観視した時のばかばかしさとか滑稽さと切り離せないと思う。

だから辛くて悲しいお話をただただ「辛いよ~悲しいよ~」って主人公が吐露しているだけの作品はどうも自己陶酔的というか、いまいち立体感と言うか、雰囲気のないものになってしまうんじゃなかろうか。

主人公の友達が親の虐待を苦にして死んじゃったから、親のとこから遺骨を奪って後先考えず旅に出ちゃうなんてめちゃくちゃなわけで、それを主人公目線の感傷とか感情のアップダウンに読者を引き込みつつ、ちゃんと主人公を「めちゃくちゃなことやってる完全ヤバい奴」として揶揄する視点も残しているのが見事な点…なんだと思う…

評判に違わずめっちゃ良い漫画だった。読むべし。

 

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(上) (幻冬舎文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 文庫
 
蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

蜜蜂と遠雷(下) (幻冬舎文庫)

 

映画を観て、トラウマレベルに胸が震えたので原作も購入。

もう映画のレビューに書いたことがほんとにすべてなんだが、少なくとも、楽器(たぶん特にクラシック)を習ったことある人は全員映画観て。私は4歳~ヴァイオリンを習ってたので、刺さりすぎて死にそうになりました。

人前で演奏する時の、舞台裏の刺さるような静けさ、恐ろしく冷えた指先を手袋で温める時の気持ち、袖で感じる客席の気配、舞台に立った時の目が潰れそうな照明の眩しさ、力の抜けた身体でするお辞儀、そういうのを知っている人は、全員観てください。

↑観た直後にヤバい熱量で書いた

小説は、映画の衝撃の後に読むとかなり親切設計で、普通に読みやすくて面白いな。という感じで終始読み通してしまったが、この長さでそう思わせてくること自体異常なことなんだろう。

実は私、恩田陸の小説を人生で読み通せたことが一度もなくて(たぶん人生で3,4回トライしたが、なぜかいつも途中でくじけてしまう)、この本で初めて恩田陸の作品を読破した。感動。 

「コンクールの成績良いやつだいたい勉強もできる(音楽教室で出来が良かった子、不思議なくらいみんな有名私立中に進学した。門下で一番上手かった人、しれっと東大入った)」とかクラシックあるあるにガクガク頷いたりしているうちに読み終えてしまった気がする。本筋じゃないのに…。音楽を1ミリも知らない自分になって読みたい。

天才は、ピアノという箱から取り出すべき音楽が分かっている。だからそこに座って、ただ音楽を取り出してあげるだけ。というような描写があるが、めちゃくちゃわかる。上手い人が演奏する姿を見ていると、なんかその動作ひとつひとつに全然恣意性を感じない。こうしたいからこうしました、みたいな意思と離れたところで楽器に触れているように見える。何なんだあれ。

私なんてめちゃくちゃ眉を上げ下げしながら弾いちゃうよ。まじでヘタクソのやることだわ。恥ずかしいぜ

ちなみに映画を観てから安直にプロコフィエフのピアノ協奏曲3番にハマりましたけど、いくつか聞き比べた中ではポリーニが一番好きだった。

このとき25歳。ヤバ。クラシックオタクの父に共有したら、「痛快ですね」とのコメントが返ってきたが、本当にそれ。プロコフィエフがこんなに明瞭で気持ちいいことある?普通もっと(悪い意味で)意味ありげに弾いちゃうでしょ。はあ。好き。


 

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

  • 作者:大前粟生
  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: 単行本
 

人生最良の書店・長崎次郎書店でドドンと面陳されていたので買った。

大前粟生氏は界隈で異様に評価の高い文学ムック「たべるのがおそい」にも書いていたようで、しかも河出だし、これは絶対に良いやつじゃん!と思って買ったら最近島本理生が書評を新聞に書いたり、Amazonで売れ筋商品に上がったりしてきていてすご。長崎次郎書店すご。 

う、うおお~、これは確かに、「あ、こういう小説あるよね、これ系ね」じゃないやつ!!!(=とても良い、好き) 

たぶん、この本には、フェミニズム小説というラベルを(他に貼ることのできるいくつものラベルとともに)貼ることができると思う。たぶん、フェミニズムが世間的に少しずつ注目されるようになったのに伴って、最近のエンタメ界隈でも自然と取り上げる人が増えている。

読むとやや気疲れするので好んで読んでいるわけではないのだが、流通量が増えた分自然と触れることが多くなったフェミニズム小説なのだが、そこで描かれる構造として「傷ついている女性&女性を傷つける男性=立ち上がれ女性」はたぶんもう古くて、ほぼ見かけない。

で、「傷ついている女性&女性を傷つける、実は傷ついている男性=みんな辛い」まで行っているやつに最近はよく出会うが、この本みたいに「傷ついている女性&女性を傷つける、実は傷ついている男性←を見て傷つく男性=張本人も辛ければ、その構図から抜けたメタ的視点に立っても辛い」まで視座を上げて書いている話(説明が下手)は初めて読んだ。あ、新しい…。

それを静かに飄々としたトーンで書いているのがすごく良い…

たぶんずっとこのテーマで行くわけもないだろうから、次作が楽しみ…

私は同時収録の「たのしいことに水と気づく」が一番好きだった。

様々な出来事があり、感情の起伏があり、その上で「どうしようもなく日常」という印象に落ち着くお話がめちゃくちゃ好きなので…。

 

明日また電話するよ

明日また電話するよ

  • 作者:山本 直樹
  • 発売日: 2008/07/17
  • メディア: コミック
 

自選短編集。漫画。

とにかくタイトルが本当に好きで、初めて書店で見かけた時(たぶん1年以上前)から4日にいっぺんは頭の中をリフレインする レベルだったんだが、1200円って高くね?と思い買えていなかった。だってAmazonレビューも少ないし。

が、最寄り本屋にあるのを見つけてしまいついに意を決して購入。帯文西加奈子だし。(西加奈子読んだことないけど)

ん~~~~~エロいやつだったか~~~~~~~~~~!

短編集なんですけど、私の記憶が正しければ全編致していますね。(急にです・ます調)

最初の数編はあまりの毎回致しっぷりに面食らったが、途中から濡れ場に目が慣れてきて3分の1を過ぎたあたりから話の本筋にちゃんと集中できるようになった。

AVのモザイク加工をする仕事の人が感覚麻痺して何も感じなくなる過程ってこういう感じだろうか。たぶん違う。そこまでの境地ではない。

で、途中から読めるようになった話の本筋の方は、とっても良かった。

ひとつひとつがかなり短い話で、台詞ひとつひとつも文字面だけだと全然なんにも説明しないし、意味深でもないし、本当に平易な言葉の単純な会話で、なのに構図とか、表情とか、間の描き方とかで全体として心に残るような話になっている。凄い。

こういう漫画描きたいと思って、みんな描けないんだろうな…と思ったりした。

「お、意味ありげな台詞(/画)」と思うってことは物語に没入できていないってことだから、それがない漫画って凄い。たぶん。

あと、いちいちタイトルがめちゃくちゃいい。(下記)

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みはり塔
ぽつん
泳ぐ
コールド
渚にて
アナログ温泉
テレビばかり見てると馬鹿になる
肉彦くんとせんせい
Cl2
呼ぶ声
明日また電話するよ

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自選集だから作品ごとに著者の解説がついているのもいい。

これ、20年前~10年前くらいに描かれたものを集めているらしいというのも驚き。全然古びてない。たしかにスマホとかは出てこないけど。

これを読むと、最近の色んな作品、これの焼き直し説出てくる。ネット上で似たようなやつ結構見たことある。

漫画もそうだし、短編映画とかでもこういうことやろうとしているやつ結構ある気がする…。それならこれを読んでおけばいいな…と思ったり。

 

 

9300字~~~!目が限界。

引きこもり中の暇つぶしになれば幸いです!!!!!

興味あるものあれば読んでください!!!そして語ろう!!!!!!!!!!!